第4回チャレンジ実践講座開催報告沖縄県不動産コンサルティング協議会
令和2年2月14日、沖縄県不動産会館4階ホールにて「第4回チャレンジ実践講座」を開催致しました。
実践講座では、協議会専門委員会が作成した相談案件について、各グループでディスカッションし、取り纏めた提案事項を
仮想顧客に対してプレゼンテーションするという実践形式の講座となっています。
【相談案件】
①アパートの空室がなかなか決まらず困っている。他の不動産会社に任せているが現在3室空室で、来月には更にもう1室空く予定。管理会社からの何の提案もなく空き部屋が年々増えていく状況。ローンの支払いもあと10年残っていて、このままでは支払いも心配である。また、賃料収入を生活費に充てているので、このままでは預り金を切り崩していく事になる。何か良い方法はないか?
②知り合いの税理士に相続税評価額を出してもらい相続税のシミュレーションをしてもらったが、法定相続分で分けた場合、現在の計算で計算すると相続税が1042万円かかると言われました。相続税を下げる方法とか、これといったアドバイスもなく頼りなく感じたので資料をみて何かあればアドバイスしてほしい。
③財産を誰にどのように遺すか悩んでいる。なるべく公平にしたいと考えているが、母子家庭の花子のことが気になる。また、相続税が払えるように現金も分けて相続させようと思っている。
【家族構成】
比嘉太郎〈相談者〉(68歳)
居酒屋を3店舗約40年にわたり営んできたが、年齢のこともあり、3年前に経営権を売却した。親から土地3筆を相続し、35年前に自宅(ローン返済済)を、20年前にはアパートを、3年前には戸建て住宅を建てた。老後の生活費の足しにと思って賃貸事業を始めたが、アパートは稼働率が悪く、この先が心配。自身の相続の事も視野に入れて現状を変えたいと思っている。妻と長女の花子、孫の潤と4人暮らしである。
比嘉幸子〈妻〉(65歳)
太郎さんと長年にわたって飲食店を切り盛りしてきた。できれば太郎さんと二人の年金(月額18万円)で賃貸収入でのんびりと生活ができればと思っている。
比嘉一郎〈長男〉(43歳)
国家公務員で東京京在住。10年前に東京でマイホームを取得。嫁である和子さんも公務員で生活も安定している。二人の子供がおり、長男は来年大学進学予定であるが、定年後は沖縄に戻ろうと思っている。
比嘉花子〈長女〉(41歳)
看護師として県立病院に長年勤めている。子供である潤が生まれて2年後に離婚。実家に出戻り仕事と子育て、親の手伝いもこなす頑張り屋である。再婚は全く考えてなく、子供の成長が唯一の生きがい。
比嘉次郎〈次男〉(36歳)
開業医であるが、結婚して10年になる妻昭子との間に子供はいない。夫婦とも子供は諦め、二人で人生を謳歌していくと決めているようである。病院経営も順調にいっており、マイホーム購入も検討している。現在、賃貸マンション暮らしである。
【比嘉太郎さん個人資産】
①自宅土地(評価額1980万円 200㎡ 普通住宅地)②自己建物(評価額300万円 RC造り2階建て 築35年)
③アパート敷地(評価額8800万円 500㎡ 第1種住居地域)
④アパート(評価額2500万円 RC造り3階建て 築20年の3LDK12室 家賃6.3万円 稼働率は悪い)
⑤貸家敷地(評価額7860万円 440㎡ 2種低層住居専用地域)
⑥貸家4戸(評価額5030万円 同一敷地上に4戸 築3年 家賃10万円 稼働率100%)
⑦預貯金(3000万円)
⑧借入金(8000万円〔アパート5030万円、残期間10年(金利2.5%)貸家2970万円、残期間17年(金利1.8%)〕)
【とあるグループの提案内容】※概要のみ
①アパート経営/空室対策等について
現在、アパート(敷地含む)評価額が1130万円であり、その他の経営環境(家賃収入が771万円、支出が621万円、キャッシュ150万円、利回り1.3%)を考慮するとアパートの売却が現実的である。売却価格が1130万円(譲渡税はここで考慮しない)であれば、借入金の返済に8000万円を充てたとしても手元に3300万円残ることになる。
②相続税の節税について
小規模宅地等の特例を使い自宅を長女である花子さんへ相続させる他、貸家敷地を2筆に分筆して相続税の圧縮を図る。
③財産分与について※相続税資産は省略
自宅及び貸家(430万/年 利回り15%)→長女である花子さんへ
現預金(5000万円)→長男一郎さんの子供2人へ2500万円(教育資金一括贈与)
次男次郎さんへ2500万円(住宅取得資金贈与)
【協議会総評】
どのグループもレベルが総じて高く、相談者の取り巻く環境や資産を丁寧に精査しており、尚且つ、登場人物其々の想いをくみ取った提案内容であった。しかし、コンサルティングの実務現場において顧客に対して説明を行い納得して頂くためには、高度なコミュニケーションの力量が求められるため、更なる講座参加者の業務研鑽が求められる。